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黄昏の猫背の戯言

Re:アジャイルサムライDevLOVE道場二周目 第一回 インセプションデッキ(前編)

先日ツイートした通り,やっとアジャイルサムライを読み終えた小生.
意気揚々と早速現場で!!!
と突っ走っても辱めに遭うのが見え見えなので,
どこかでリアルな現場の話を聞けたり,ワークショップ的に実践できる勉強会はないかと探していた折,
ありました,どんぴしゃで.
知る人ぞ知るDevLOVE主催の勉強会です.
http://www.zusaar.com/event/368007

ということで例によって例のごとく“ブログを書くまでが勉強会”ということで,
簡単にレポートエントリを上げたいと思います.
ちなみに今回は
 インセプションデッキ(前編)
とある通り,

プロジェクトに対する期待をマネジメントするためのすぐれたツール”(アジャイルサムライ P43)

としてアジャイルサムライの中でも紹介されているインセプションデッキの10の設問と課題の内,

  • 我々はなぜここにいるのか?
  • エレベーターピッチを作る
  • やらないことリストを作る

を取り上げた会でしたので,
勉強会での進行の様子,その中で議論したこと,感じたことなどを書いてみようと思います.

全体の流れ

今回の勉強会は平日の19時ごろから開催される勉強会と違って,
土曜日のお昼から夕方までガッツリでした.
流れとしては,

  1. イントロダクション
  2. チーム決め・自己紹介
  3. 我々はなぜここにいるのか?
  4. エレベーターピッチを作る
  5. やらないことリストを作る
  6. クロージング

といった具合です.
インセプションデッキはそれぞれ1時間程が確保され適宜休憩を挟みながら,
 チーム内でディスカッション
  ↓
 各チームのディスカッション結果をシェア
  ↓
 それを踏まえて更にディスカッション
というように進んで行きました.

また後(懇親会)で伺ったのですが,
このアジャイルサムライDevLOVE道場の2周目を開催するにあたり,
幾つか1回目の反省が踏まえられたとの事.
具体的には,
今回構成されたチームにそれぞれ運営サイドの方が各チームに“プロダクトオーナー(PO)”としてディスカッションに参加するという改良
が加えられており,
イントロダクションで創設者の@papandaさんもおっしゃっていた,
実際に使って(考えて)みて素振りをすることに重点を置く,
“道場”と銘打つのも納得な構成になっていました.

チームは普段,SIに従事している参加者,サービサーとして働いている参加者でチーム分けがなされ,
POを含め大体6名程のチームが2チームずつ作成されました.
我々は紆余曲折?あって,武蔵小杉ザムライチームでした.

また,
チーム間のディスカッションテーマの差異をなくす目的で,
以下の様なシチュエーションが設定されました.

  • チームメンバーは全員,中堅旅行販売店の社員である
  • 価格競争を余儀なくされ,業績は伸び悩んでいる
  • 経営陣から同社企画部に対し,中高年をターゲットとしスマートフォンを販路とした売上を拡大するよう指示が飛んだ
  • POは企画部に在籍している
  • POが開発部に上記の相談を持ちかけた

このシチュエーションを前提とし,勉強会が進んでいきます.

我々はなぜここにいるのか

今まさに自身が席を置くプロジェクト・案件を思い浮かべ,我々はなぜここにいるのか?と問いかけた場合に,
明確に,自信を持って答えられる人が一体どれくらいいるのでしょうか.
もっと言えば,
その問の答えは,プロジェクト・案件に関わるすべてのメンバー間で等しいものなのでしょうか.
チームの存在意義,PMBOKで言う所のプロジェクト憲章に掲げられるプロジェクトの目的は,
スポンサーでもあるPOの意向を的確に汲み取らなければなりません.
チーム内の議論においても,
POが明確に答えを持っているわけではありませんでしたし,
POがやりたいと言ったことは,
上司から言われただけのこともあれば,
前言と比べると矛盾している(ように聞こえる)こともありました.
ましてやその背景まで語られるような事はほとんどなく,
“なぜ”を深掘りしていく必要があります.
にも関わらず我らが武蔵小杉ザムライも,
POのやりたいことに引きづられ,“Why”ではなく“How”が議論の中心となってしまいました.
また本来答えるべき
“我々はなぜここにいるのか”
という問の答えに繋げにくい議論(例.なぜ中高年なのか?なぜ◯◯という事がやりたいのか)に終始してしまいました.
これについては議論の後のチーム間共有を受けて,
例えばどのような答え(模範解答?)があるかをフィードバックして欲しいところでした.

エレベーターピッチを作る

プロジェクトやアイデアの本質を素早く伝えるために必要なものすべて”(アジャイルサムライ P58)

が表現されるエレベーターピッチは,
社会人1年生が新入社員研修で学ぶ“要点を簡潔に伝える”といった類と同様のもので,
何もプロジェクトやアイデアに限った話ではありません.
今回はアジャイルサムライの中でも紹介されているエレベーターピッチのテンプレートに従い,
プロジェクトで創るプロダクトの定義を議論していきました.
ただ,
“我々はなぜここにいるのか?”がしっくりこないまま突入してしまったこともあり,

  • 潜在的なニーズ
  • 抱えている課題

についてはすぐに答えを出すことができませんでした.
それを受け,既に議論していた中で合意がとれていると思われる部分から優先的に認識を合わせ,
最終的な筋が通るよう調整していきました.
特にエレベーターピッチのテンプレートが埋まるたびに全体を復唱することで,
チーム内での認識を合わせるのみならず,ストーリーの妥当性を確認できたのは成功した点だったと感じます.
この議論を踏まえた後でのチーム間シェアでは様々な利点・機能を持つプロダクトが上がりましたが,
オススメの旅行プランを提示することに工夫を凝らしたチームが多かったように感じます.
それと比べ自分達のチームが議論して出した結論は,
“プロダクトの利用者に旅行プランを作ってもらう”
というものだったので(手前味噌ですが)特徴的だったとは思いますが,
小生が発表した際,それをうまく伝えきる事ができなかったのは反省点でした.
また,
チーム間の共有後再度ディスカッションを行った際,
議論しきれなかった部分や,うまく伝えきれなかった部分を掘り下げて議論することができたため手応えがあったのですが,
それを再度チーム間で共有する時間が設けられなかったのはやや勿体無く,消化不良のように感じました.

やらないことリストを作る

3つ目に取り上げて議論したインセプションデッキは,

プロジェクトのスコープへの期待をマネジメントする”(アジャイルサムライ P63)ための“やらないことリストを作る”

です.
ここではこれまで議論した内容を踏まえ,

  • やること
  • やらないこと
  • 後で(「やる」か「やらない」かを)決めること

としてフィーチャを挙げていきます.
どのチームもそうだったとは思いますが,
最初のディスカッションではやることばかりが挙げられ,スコープがどんどん拡大していく有様でした.
それを受けてチーム間共有後には,
そこでのスコープをどのように減らしていくかを考えなければならない,というフィードバックがありました.
例えば

  • 予算
  • 納期
  • 機能の重要性
  • 実現性

といったこと考慮するということで,
小生のチームにおいても,
“まずはコア機能を搭載したβ版を作成する”
という前提でスコープが絞りこまれて行きました.
これについては,ディスカッションも後半でチーム内の役割も打ち出されてきたということもあり,
スムーズに議論できたように思いました.

振り返りと所感

3つのインセプションデッキを議論した後は,
議論の内容や進め方などの振り返りを行いました.
振り返りは(どちらかと言うとプロジェクトファシリテーションの分野として言われることの多い)KPT(Keep,Problem,Try)に従って進めて行きましたが,
主に以下の様な振り返りが挙がりました.

  • KEEP
    • チームメンバが満遍なく発言できた
    • 少ない時間にも関わらず個々の議論ができた
  • PROBLEM
    • 前半のディスカッションにおいて,議論内容や目的を共有できていなかった(回し役不明瞭)
  • TRY
    • まわし役を(順番にやるなど)決めてしまう

勉強会を終えてからの渾身(懇親)会では挨拶も程々に,
普段どのような仕事をしているか,
今回どのような想いで勉強会に参加したか,
で,アジャイルってどうよ?
といった話題が中心で個人的には楽しませて頂きました.
#小生が色々disってたってのは置いておく
この手の懇親会で様々な参加者の方と話していて常々感じるのは,
環境,マインドセットなどが皆それぞれで双方に恵まれている部分,そうでない部分が必ずある
ということ,また,
それを知っているだけでも選択肢や視野が広がる
ということです.
特に今回の勉強会は,
週末の貴重な時間を数回割いてでも参加したいという意思を持って集まった稀有なパワーのある方々ばかりなので,
業界への問題意識だとか改善意欲の高さだとかが似通っていたりすると,
まぁアリテイに言えば居心地が良いわけです.
その分現場に帰ってもがき苦しむ,といった事がないとは言い切れませんが,
それもまた試練であって,もっといえば,最終的なゴールはそこにあるはずです.
巷ではいまだに知らないなんてありえない病なんてのが流行中だそうで,
当然,アジャイル開発で万事解決タカノリ的にもオールオッケーローラもハッピーとはいきませんが,
今後も継続して開催されることになるこの勉強会,
積極的に吸収して帰りたいと思います.
あわせてこのアジャイルサムライ,
この業界に身を置くのであれば,是非手に取って読んで欲しい1冊です.